「句具ネプリ秋 2021 vol.03」の感想
俳句のための文具ブラント、句具さんが発行する「句具ネプリ秋 2021 vol.03」にこのたび参加しました!
季節の変わりめに発行されるこちらのネプリ、参加させていただくのも3回めとなります。すてきな文具の提案だけでなく、どなたでも参加しやすいこういった楽しい企画や句会など、俳句の魅力を軽やかに広げていっている句具さん。いつも、すごいな〜!と思っています。
今号は前号より多い、148句が集まったとのこと! たくさんのすきな句がありましたが、特にすきだった句をあげていきますね(敬称略・掲載順)。
うつかりと星座にされかけるきのこ 土井探花
「されかける」がたまらなくかわいいです。まだ完全には星座になっていないのですね。いろんな生きものがゼウスにより星座にされてしまう、そんな神話を思いおこしました。
向日葵の枯れきつたるが眼をひらく 犬星星人
溌剌と明るい印象の反面、向日葵ってなんだか怖くないですか。特に中央とか…(宮本佳世乃さんの《ひまはりのこはいところを切り捨てる》が思いだされたり)。写生ってよく見ることだと思うんですが、掲句はよく見ているうちに、ふっと現実から非現実の域に足を踏み入れてしまった。マジックリアリズム的魅力のある一句だと思います。
水平線まで香りさう島の柚子 このはる紗耶
なんて大きくて気持ちの良い景! 島の柚子だから、すこし野性味などがあるのでしょうか。爽やかな香りが漂ってきそうです。
林檎かもしれず言霊かもしれず 中村想吉
一読して、納得感が強い句だと思いました。つやつやに磨かれた林檎を思い浮かべ、もしかしたら言霊かもしれないと思えてくるから不思議。「かもしれず」のリフレインがいいです。
金木犀夢に会ひたる人に会ふ 箱森裕美
「夢に会ひたる人に会ふ」こと、ありますよね。夢の内容までは書かれていないですが、金木犀との取合わせから、なにか心弾むことであると想像します。ふいに来る香りが背中を押してくれる気も。ちなみに先日Twitterのスペースで、ネプリの好きな句を話し合おうという会に参加しましたが、掲句について松本てふこさんが「推しに会いにいくのだと思う」と言われていたのが面白かったです!
眞子さまのことが心配白芙蓉 千野千佳
今号でいちばん話題になっている句では…?シンプルな言葉に、心底はっとさせられます。すでに多くのかたが言われていますが、やわらかくやさしい印象の白芙蓉との取合わせがいいです。
振り向くとき小鳥は僕の死ねない眼 楠本奇蹄
袋回しなどでご一緒している奇蹄さんの句を読むと、いつも「これが詩なんだ」と眼がひらかれる思いがします。自分はまだどこか、詩をわかっていないんじゃないか、という気持ちがあるので…(ぜんぜん感想になっていなくてごめんなさい)。
台風のほぐれて雨の強と弱 西川火尖
台風が熱帯低気圧になるなどして力が弱まってきたことを、「ほぐれて」と表現したところに発見があってすごいなぁと思います。そして、地域によって雨の強いところと弱いところがあるというのも納得。
靴を買うだけの休日秋夕焼 ノグチダイスケ
「だけ」とは言っていますが、それでも充実していたことを秋夕焼が肯定してくれるような。
十六夜やブラのたたみかた 検索 後藤麻衣子
一字スペース空けがとても効いています。こういうことあるな〜という共感と、ユーモアあふれる一句。
自句〈真円を描く練習小鳥来る〉にも、ありがたい感想をいただいておりとてもうれしく思っています。皆さま、ありがとうございます!
「句具ネプリ秋 2021 vol.03」のコンビニでの印刷および、データの無料ダウンロードは9月30日まで。気になるかたはぜひ、お手にとってみてください〜。