思いだす日記 | 五月二日(土)
三十度の予報どおりの暑い日。風が吹いていない。
夫がずっと庭で作業している。気づいたら、ベランダにあたらしい棚ができていた。ずっと窓も開けっぱなしなので、わたしたちは内と外を行ったりきたり。生垣の剪定を夫がしていて、あーちゃんは葉っぱをぶちぶちとちぎることに、興じている。常緑樹であること。そこから情報が更新されない庭木の葉は、いっけん、杉の葉のようにも見える。
わたしはベランダにだした椅子で、本を読んでみる。読みかけのイーユン・リーと、なんとなく本棚から手にとった『高校生のための小説案内』(筑摩書房)。後者は古書店で、編者である梅田卓夫先生の名前をなつかしく思って買ったもの。梅田先生は母校の教授だった。水が入ったコップの絵を描き、それをもとに文章を創作するという授業があった。文章にたいしては「ふうん」という感じだったが、コップの絵を激賞された記憶がある。わたしは絵を描くこともすきだったと思いだす。やさしい先生だったなあ。数年まえのこと、ともに本書の編集に関わっている、清水良典先生(も、母校の教授)の創作関連の本を読んでいて、そのあとがきで梅田先生が亡くなったことを知り、とても悲しかった。本書はいろんな作品の抄録が載っているのだが、頁をめくると、さいきん読みたいと思っていたシモーヌ・ヴェイユ『工場日記』があって、お、と思う。ほかには野上弥生子、S・レム、T・マン、吉田知子。イーユン・リーの文章は、置かれている環境などはちがうのに、それを知っていたと言いたくなるような、悲しみを湛えている。
「月刊おもいだしたらいうわ」のことをTwitterで知り、さっそく最新号のPDFを印刷して読む。そのなかに、友だちと「小説を書こう」と言い合う、という記述があって、いいなあと思う。わたしは書くことで、友だちといっしょになにかできればいいな、というところで止まったままなにもしていなかった。そのまえに、まずはひとりでやろうと思ったばかりだった。やってみたら「なにか」は、見えてくるかもしれない。
夕食の直前に、ベランダでビールと堅あげポテト(黒こしょう味)。堅あげポテトは好物なのだが、食べていると頭の周辺で、ばりばりという音しかしなくなるので、現実逃避しているような気持ちになってくる。
夕食 カレー(二日め)