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2022-02-01

津川絵理子『夜の水平線』(ふらんす堂)十五句抄出

津川絵理子『夜の水平線』の表紙

 

 津川絵理子先生の句集『夜の水平線』(ふらんす堂)が第61回俳人協会賞を受賞されました。おめでとうございます! 俳人協会HP

 本書は絵理子先生(俳句結社『南風』に所属し師事しているため、こう呼ばせていただきます)の第3句集。2020年12月に発行されています。

 発行時、わたしはまだ句歴も半年ほどで、俳句結社「蒼海」に所属していました。絵理子先生の句に触れたきっかけは、結社誌に掲載されていた招待作品です。また、編集後記に千野千佳さんが「スランプになったときは津川絵理子さんの句集を読みます」という旨を書かれていたことがとても印象的で…自分も読んでみよう!と思ったのでした(ファンであるかたが『いいよ』と言われる本をわたしはすぐ買います)。

 幸運にもそのとき、Web上では在庫がないのに地元の書店で取り寄せができ、第1句集『和音』と第2句集『はじまりの樹』がまとまった『津川絵理子作品集 Ⅰ』(ふらんす堂文庫)もいっしょに入手できたのです。

 順番に読んでいくなかで、少しはずかしい話ですが、読めない漢字・知らない季語をすべて調べることを初めておこないました。どの句からも目が離せなくて、なにかを取りこぼすのが嫌だった。いっきに絵理子先生の句に夢中になり、もちろん影響はそれだけではないのですが、現在も自分は俳句をつづけている気がします。

 前置きが長くなりました。今年に入ってから、本書をノートに全句書き写してみたのですが(これもまたまた千佳さんの影響…!)、あらためて好きな句を抄出してみたいと思います。


 

断面のやうな貌から梟鳴く

近づいてくる秋の蚊のわらひごゑ

同じ味して七色のゼリーかな

たどりつくところが未来絵双六

止まり木に鳥の一日ヒヤシンス

タランチュラなめらかに来る夜長かな

鯉の吐く小石の音や雛祭

引力は血潮に及ぶ鏡餅

冬薔薇満場一致とはしづか

香水や土星にうすき氷の輪

水を飲む馬の眼張りぬ冬の山

吊られたる大筆売れし十二月

自転車とつながる腕夏はじめ

盆栽は鉢を出たがる柿日和

星飛んで巨きな墓に王ひとり


 現在、本書は再版の準備中だそうです。電子書籍版は、版元さんのシリーズで驚きの1100円で購入することもできます。

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