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2020-10-05

岸本佐知子『ひみつのしつもん』を読んで思った、なんらかのこと。

翻訳家・岸本佐知子のちくま書房から出ているエッセイ集、全3冊

 

 七年。待ちわびていた。翻訳家・岸本佐知子さんの新刊エッセイ『ひみつのしつもん』(筑摩書房)を。ここ三年くらいは育児にかけずりまわっていて、あまり自分の記憶がないので、体感的には四年ほどだったけれど。

 待っているあいだは前作『なんらかの事情』、前々作『ねにもつタイプ』を繰り返し読んでいた。そのうち「◯◯の話が読みたい」と頁を捲っても、見当たらないことがたびたびあった。あまりにも繰り返し読んだので、頭のなかが勝手に、岸本さん的エピソードを醸造しはじめたのだろうか。(『きのこの話』が読みたいときなど、それは白水社刊『気になる部分』だという場合もある)

『ひみつのしつもん』より、ページの一部分

 

 本作を手にしてまず、ぱっと開いた頁の挿画がこちらだった(クラフト・エヴィング商會さんの挿画はつねに最高だ)。思わず「ひっ」と声がでた。いやが応にも、内容に期待がふくらむ。

 岸本さん、パワーアップしてないだろうか。ふつふつとうれしくなってくる。いっきに読むのがもったいなくて、一章ごとに本を閉じ、呼吸をととのえてから、次章にのぞむ。しかし今回も、途中から頁を捲る指が止まらなくなり、いっきに読んでしまった。

 わたしは岸本さんに親しみを感じすぎているせいか、本作を読んでいた日には、はいていた靴下がまわる(五本指靴下だが、小指のぶぶんに親指が入っていた)、目のまえで子どもの〈味噌汁のお椀がテーブルの上ですーっと動く現象〉が起こる等の、本作とのシンクロニシティがあった。

 次作が刊行されるまで、また何年だって待てる、と思う。それまでは、また本作(と前作、前々作)を何度でも、繰り返し読む。ゆっくりと、頭のなかで醸造がはじまるのを、感じながら。


 上記は、今からちょうど一年まえくらい、岸本佐知子さんのエッセイ集『ひみつのしつもん』が発売された際、出版社によるTwitterでのキャンペーンに応募した文章を、加筆修正したものだ(文章内の年数等は執筆時のまま)。本書にかんして” なんらかのおもい “をつぶやくと、なにかオリジナルのグッズが貰えるという、キャンペーンだった。

 Twitterでは、七個ほどのツリーになっていたつぶやきも、こうやってまとめてみると、存外みじかい。書評とも、感想文とも言えないものだけれど、ふとまとめておきたくなった。キャンペーンにはぶじ、当選することができた。だいすきである岸本さんのサインと、クラフト・エヴィング商會さん直筆(!)のイラストがついた栞をいただいたのだった。

 ながねんの夢がすこし叶ったような、そんな気持ちになったことを憶えている。

キャンペーンで当選して、貰ったメッセージと栞
な、名前が書いてある……! とえらく感動しました

 

 

 

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